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ぶん2って書いてぶんつー→文通ですね、みたいなどうでもいいギャグ思いついたんです。げふん。
文二号。一回書きはじめると止まらない楽しさ。(けどすぐ飽きる)
元々絵より文寄りだったので書くのは好きなのですがやっぱりうだうだやってると嫌になってきます。絵と違ってその日で終わらせなきゃっていう考えが出るからどうしても面倒になってきたり。
続きからドウゾーなんかよく分からない妙義です。どうでも良いけどラジコン転がす毅さんってどうなの。

追記>うえええというか前の文に反応して頂けるとは思いませんでした…!ああまさか読んで下さる方が居るとは思ってなかったのでそれだけで嬉しいです本当有難う御座います申し訳ないです><なんか、もう本当、申し訳ない……(それしか出ない)

 最初に誤解の無いように言っておくが、俺は疑問符と感嘆符を同時に何個も使うことが大嫌いだ。記号を何個も並べて良いのは感嘆符だけだと信じているが、疑問符と感嘆符を同時に沢山並べるというのは聊か頭の良い文体とは到底思えぬ格好となってしまうからである。そもそもあれは感嘆の念を持っているのか疑問を抱いているのか行ったり来たり、考えるのも忙しいほどの事では無いだろうか。しかし、最初に念を押しておいて難だが、これだけは、今だけは例外だと思っておこう。
 「ハァアアア!!?!?!?」
 午後10時妙義山の頂上で庄司慎吾は思わず声をあげた。気の抜けたような呆れたようなどっち付かずの声は恐らく慎吾自身も何なのか分からないようだったが、取り敢えず叫ぶ程のことがあったことは確かなのだろう。慎吾の近くに居た者たちは想像していた反応より随分慎吾の反応が大きかったのがびっくりしたのか、全員目を丸めて慎吾の方へ向き直った。周りに居たものは矢張り、なんだなんだと慎吾の方へと目を向けた。
 「テメエもいっかい言ってみろ」
 いつもより増して凶悪な目線を向けながら慎吾は言った。
 「毅さん、事故起こしたってよ慎吾」
 先程の大声で思わず缶コーヒーを落としてしまった彼は、慎吾のドスの聞いた声にも微動だにせずつい何秒か前に言った台詞を反芻した。落とした缶コーヒーはもう諦めているようだが、彼のズボンにわずかその珈琲のシミがついていたことに慎吾は気付いたが敢えて何も言わなかった。
 「何に驚いてんだ慎吾ー」珈琲のシミを後で発見して慌てふためく彼の姿を想像していた慎吾に、その本人がちゃかすように言った。
 「何にって…何だよ」
 「心配してんのか?」
 元々気性の荒い慎吾ではあったが、流石にその言葉には怒るよりか笑いが出てきた。嘲る様にははっと笑うと周りに居た者たちも合わせて笑うが、その次には慎吾の顔は元通りの不機嫌顔になっていた。
 「馬鹿言ってんじゃねーや、あんなの居なくなっても十分だが、事故ォ?」
 「何でも、崖から落ちたとか」
 「が、がけ…?」慎吾は目を丸めた。
 「嗚呼、まっさかさまだ」
 ――それは事故とかそういうものでは無いのではないのか?と慎吾は肝を冷やした。まさか、妙義の谷は深いぜ、という言葉を本人が体感してしまうことになろうとは。別段中里が気になっている訳ではないが、誰だって知っているものが谷底へ落ちたと言われれば結末は気になるに決まっている。
 暫く何も言えなかった慎吾を周りの者は心配そうに――慎吾にはそう見えた――当人を見ていた。俯けば嫌でも視界に入る、目前の人物が履くズボンの珈琲のシミすら気にならなくなっていた。
 ナイトキッズのチームリーダーであり、でかい面しながら堂々と不気味な黒のBNR32を自分の手足のように転がす中里は自分のコントロールミスで事故るような奴では無い筈である。慎吾は思いつめたように黙り込むと暫く考えた。GTRの性能ばかりを選んだ腕も立たないちんぴらの様な奴ではない。車も良ければ、認めたくは無いが腕も立つほうだとは思う。
 「そうだ、何処で事故ったって」
 肝心なところを聞いていなかった慎吾ははたと思いだしたように言った。希望を持った言い方であったが、肩をすくめながら応えるチームメンバーによってその希望も簡単に打ち砕かれた。
 「妙義山だ」
 そりゃあ、誰だって人が死ねば良い気持ちはしない。中里とは犬猿の仲であるし、自分自身好きではない。だがそれとこれとは別である。しかし今の慎吾の心配というのは、中里の身の上の心配よりも先に、どちらかというとこのような考えから及ぶものであった。
 ――チームリーダーがホームコースで事故?そんなん、ナイトキッズの面目は丸潰れの様なモンだぜ。しかも谷底だなんて生きている方が不思議なンだ。死亡事故なんてたまったもんじゃないぜ。封鎖も考えられんだぞ…畜生!毅の野郎なんてことしてんだよ…!
 自分中心に世界が回っているとは、まさにこのことであった。
 「それにしても石ころで事故っちまうなんて…32ももう探せねえよ…」
 「…あ?」
 慎吾は耳を疑った。ホームコースで愛車を転がしてる時に谷底に落ちた上、その理由は石ころだって?一体全体どういうことなのだ、それに――自分のことは棚に上げて――中里自身の心配よりも32の心配だなんて、と慎吾は目の前の連中の非常識さにふつふつと怒りがこみ上げてきた。
 「高かったんだろ?32、手元が狂ったなんてもんじゃないぜ、俺らも走らせたかったんだぜ、あれ…」
 「嗚呼…毅さんにも同情しちゃうよ」
 なんてやつだ!こんな奴がナイトキッズに入っていたなんて!32ばかりを心配して中里のことなんて蚊帳の外、しかも事故自体を手元が狂ったの一言で片づけた上で"俺らも走らせたかった"だとォ!今頃毅は谷底で呻いてるかもしんねえんだぞ、同情だなんて簡単な言葉で片づけちまったら、化けて出るかもしれねえだろ!
 「…あ、毅さん……」急に慎吾の前の男が、慎吾の後ろを見ながらそう言った。
 ――嗚呼、早くも化けてでやがった!!慎吾は肩を震わせた。
 「32、残念ですね」
 ――馬鹿野郎、本人の霊を目の前にして32の心配をするか、普通!
 「嗚呼、そうだな」
 ――うわ!毅の声が聞こえてきたぜ!しかも案外心の広い奴だな、もしかして死んだことに気付いて無ェんじゃねえのか…あり得るな、自分が死んだとは気付かずに浮遊したまま32の残骸を見つめてから此処に登ってきたんだ。
 「それは良いが……オイ、慎吾。何やってんだ」
 ――う、こいつ、おれを呪い殺す気だ!!そりゃそうだぜ、呪い殺すのなら真っ先に俺に決まってら、俺だって死んだら真っ先に毅を呪いに行くもんよ。
 中里の声が聞こえる方を背中にして俯いたままの慎吾は、ごくりと唾を呑んだ。そこから一瞬の静寂が訪れたかと思うと、慎吾は先程目の前の男が落とした珈琲の缶を素早く拾い上げ大きく振りかぶった。
 「死に晒せ幽霊風情めッッ!!!」
 ――もとより霊は死んでいるのだが。慎吾は心の中のそんな突っ込みにも構わず矢張り居た中里の霊目がけて缶を超スピードで投げつけた。
 「ッテェ!!!!」
 狙った通りに缶は中里の額右上へと鉄砲玉宜しくかけぬけ散って行った。鈍いやら間抜けたやら、しかしかなり痛そうな音と中里の悲鳴が妙義に木霊した。慎吾はいつもより凶悪な顔を浮かべながら投げ切った態勢のまま興奮状態を抑えきれず暫く黙っているも、あれ、と思考を巡らせた。――霊に物が当たっちゃいけないのでは無いか。
 シンとした空気があたりに波紋のように広がる。
 「…てめぇ…何しやがる……」
 暫くすると怒りに燃えすぎたようなドスの聞いた声が静寂の闇を切り裂いた。
 「オイ庄司、何してんだよ!」
 「早く毅さんに謝った方が良いぜ!」
 「何が幽霊だ、オカシイぜ慎吾!!」
 口々に周りの者に避難する言葉を浴びせられ、取り押さえられ始めた慎吾の怒りも爆発した。
 「何言ってやがる!!大体テメエが毅が事故って谷底なんて言うからだろうが!!此処に居ンじゃねェか!!!!」
 「…俺が事故って谷底?」
 「馬鹿野郎!毅さんが、なんて言って無いだろ!」訝しげな声を上げる中里にメンバーは慌てて修復した。
 「…待て、何のことだ」中里は今にも血が出そうな頭を押さえながら未だに怒りが途切れぬ感情剥き出しな声で言った。
 「じゃあ何なんだ!」慎吾も慎吾で、負けずに声を張り上げ始める。
 「俺らはラジコンのことを言ったんだよ、プラモ!!」
 「……ぷ、ぷらも?」
 怒りに燃えていた慎吾の火は一瞬にして鎮火されてしまった。目を点にしながら慎吾は急に熱が冷めたようにだんまりとし、抵抗に動くことすら忘れてしまったようだ。中里はというと、相変わらず何が何か分からぬままそれを見届けている。
 「――だから、毅さんが32のラジコン転がしてたら石ころに躓いて谷底に落ちちまったの、プラモって物によっちゃ馬鹿高いんだぜ、それに半端なモンじゃねえから俺らも一回操縦したかったのにって話してんの!!」
 これまた一瞬の沈黙。感覚的には何時間もたっているかのようだったが、中里が恥ずかしそうにカッとしながら咳払いをしたのを切っ掛けに、慎吾の怒りはまたふつふつとこみ上げてきた。
 「…ナンッでテメエは良い歳こいてラジコンなんか転がしてんだガキかテメェはァァアアアア!!!!!!!!」
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